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高いFOMを示すepi-PZT薄膜開発事例のご紹介

 住友精密工業グループでは 子会社SPPテクノロジーズ㈱にてシリコン深掘エッチングなどMEMS半導体製造装置を、合弁会社Silicon Sensing Systems Ltdにて MEMSデバイス事業として高精度MEMSジャイロ(図1)など自社デバイスやMEMSファンドリサービスを提供するなど、現代社会でのMEMSの実現に向けて貢献してきました。


図1 圧電式小型MEMSジャイロ (提供:Silicon Sensing Systems Ltd)

 一般にMEMSの電気機械変換素子には電磁式、静電式、圧電式、磁歪式などがあります。圧電式はこれらの中でも小型高パワーに適しています。PZTは優れた誘電特性・強誘電特性・焦電性などからミラー、ポンプ、インクジェット、アクチュエータ、マイクロホン、スピーカー、超音波センサ、赤外線センサなど様々なMEMSの電気機械変換素子、熱電気変換素子として強い要求があります。

 圧電式小型MEMSジャイロにて量産しているPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)薄膜は優れた性能指数(FOM)と高い信頼性を実現しています。またMEMSファンドリサービス事業では2020年に圧電MEMSの8インチラインを拡張し、世界的にサービス展開しています。

 MEMSは「材料」「製造装置」「製造プロセス」の3つの軸があり、すぐれた材料も低コスト化のための大径ウエハプロセスの実現がなければ世に送り出すことができません。

 住友精密工業㈱ ICT開発室ではMEMS事業を装置開発と製造プロセスの視点で技術融合させる事で、PZT薄膜など次世代基幹技術の研究開発と商品化に取り組んでいます。

 弊社では500℃以上の温度でスパッタリングすることでPZT薄膜を形成します。 PZT結晶はペロブスカイト構造(ABO3)であり、酸素12配位のAサイトにPb2+、酸素6配位のBサイトにTi4+およびZr4+が入ります。 成膜時の高温域ではPZTは立方晶でありTi4+およびZr4+のイオン半径は酸素や鉛より十分小さく、酸素原子の中で自由に移動できます。 しかし、成膜を終了し室温に降下させた時にはPZT薄膜は正方晶や斜方晶となりC軸方向に歪みます。C軸方向に電界を印加するとBサイトのTi4+やZr4+が結晶内部で上下して留まる事で分極が発生し結晶が電界方向に歪む。これによりPZTは電気機械変換素子として機能できます。(図2)

 圧電薄膜の性能指数FOM(Figure of merit for Sensors)は圧電定数d31と比誘電率εrにより得られ、d31の2乗に比例し、εrに反比例します。一般的に市販されているPZT薄膜のFOMは20~30です。(弊社調べ) これらに対し、弊社の1軸多結晶PZT薄膜は高いFOMを得るよう最適化し、FOM=40と業界で最も大きな性能指数を実現していました(図3, Conventional)。

 比誘電率は真空の誘電率との比率を表し、数値が大きい方ほどコンデンサ成分が大きくなり、小さいほどよい絶縁体です。圧電薄膜材料において分域構造が少ないほど比誘電率は低いため、低い比誘電率を得るには粒界がない単結晶に成膜することが望ましいと言われています。しかし、高い圧電定数(d31)を得るにはより大きな歪を発生させる必要がありますが、単結晶では歪を吸収できずクラックが生じさせます。適度なサイズの粒界で個々の結晶をバインディングする必要があります。また弊社のPZT薄膜は単なる結晶格子の伸縮の歪のみを利用しているのではなくドメイン反転にて巨大なd31を実現しています。最適化された結晶粒界は不可欠だと考えています。

 今回、専用設計成膜装置を内製し新たなエピタキシャルプロセスを構築し、FOM≒50のepi-PZT薄膜を開発しました(図3, Novel A, Novel B)。新しいepi-PZT薄膜は単に単結晶を追求するのではなく、高いFOMと信頼性を実現し、MEMSの電気機械変換素子に最適化させた結晶構造としています(図4)。

 ICT開発室では 新しいepi-PZT薄膜を事業化するにあたり 薄膜の成膜、デバイス設計製作、ファンドリサービスでの提供、成膜装置およびプロセスの販売など、MEMS業界に幅広い形態での提供を検討していきます。

お問い合わせ先    ICT開発室  ict-sales@spp.co.jp
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