設計指針

構造部材の設計手法

降着装置(脚)は着陸時や地上走行時に機体を支えるために、非常に大きな荷重に耐える必要があります。その一方で、飛行中は機体に収納され使用されることはないため、できるだけコンパクトかつ軽量に設計する必要があります。
このため、脚の構造部材は冗長設計(1つの部品が壊れても他の部品が代わりに荷重を受け持つ)や損傷許容設計(部品にある程度の損傷が発生しても要求される荷重に耐える)ではなく、安全寿命設計(全ての部品が機体の運用寿命に必要な最小限の強度を有する)により最大限のコンパクト化・軽量化を図っています。

構造部材に適用する材料

最大限のコンパクト化、軽量化のために、脚には他の産業向けに比較してはるかに強度の高い金属材料が使われます。例えば脚構造の主要部材に用いられる、300Mと呼ばれる鋼材は一般産業向けの高強度鉄鋼の数倍の強度(1930 MPa)を有しています。また超高強度鉄鋼のほかに7050、7075といった高強度アルミ合金も使用されます。アルミ合金は鋼材と比べて比重が約1/3と小さく、軽量化の点で優れています。
これら高強度の金属材料は強度が高く硬い代わりに脆く、傷等にも弱い(疲労破壊しやすい)特性を持っています。このため、機械加工後の構造部材に対して非破壊検査により表面欠陥がないことを確認し、またショットピーニングという手法を用いて疲労強度の向上を図っています。

脚の緩衝能力

脚には着陸時や地上走行時の衝撃を吸収し、発生する荷重を所定の最大荷重以内に抑えるために、自動車のサスペンションのように緩衝装置を有しています。
緩衝装置はショックストラット(あるいはショックアブソーバ)と呼ばれ、一般的には空気バネと作動油ダンパーとを一体化した機構が用いられます。航空機が毎秒3 mの降下速度で着陸しても、その衝撃を吸収できるように緩衝装置の設計を行います。

脚への配管・配線の艤装

脚にはタイヤ&ホイール、脚を機体に収納/展開するための脚揚降アクチュエータ、ブレーキ(主脚)、ステアリング装置(前脚)などが取り付けられます。脚揚降アクチュエータ、ブレーキ、ステアリング装置は油圧により作動するため(機種によっては電動の場合もあります)、機体に設けられた油圧源と油圧配管で接続されます。またブレーキ制御、ステアリング制御、脚揚降制御に必要なセンサーが各部に取り付けられており、機体に設けられたコントロールボックスと電気配線で接続されます。このように、脚には多数の油圧配管や電気配線が艤装されます。
脚を機体に収納する時は、コンパクトになるように部材が折りたたまれますが、その際に配管・配線が損傷しないようにする必要があります。このため、三次元CADを用いてその動きを確認しながら艤装設計を行います。

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