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液化水素熱交換器を開発、日本で初めて実環境レベルの実証実験をクリア
日本初、水素燃焼式民間航空機エンジン向けの液化水素熱交換器を開発、実環境レベルの実証実験を完了
— 2050年カーボンニュートラル実現をめざす—
住友精密工業株式会社(本社:本社:兵庫県尼崎市扶桑町1番10号、代表取締役 社長執行役員:鶴丸哲哉)は、日本で初めて、水素燃焼式の民間航空機エンジン向けの液化水素熱交換器(全長約60㎝、直径約50㎝)を開発し、実環境レベルの実証実験を完了しました。
本開発は、川崎重工業株式会社(以下、KHI)が国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)の委託を受けて進める「グリーンイノベーション基金事業/次世代航空機の開発」のうち、水素航空機向けコア技術開発プロジェクトに基づくものです。
1.開発の背景
こうした中、日本政府は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定、大胆な投資によるイノベーションを目指して、NEDOに2兆円規模の「グリーンイノベーション基金」を創設しました。このうち「次世代航空機の開発」には510.8億円が割り当てられ、水素航空機(水素燃焼、水素燃料電池)のコア技術・システム開発、機体構造検討、液化水素燃料貯蔵タンク開発などが推進されています。
本開発は、水素航空機向けコア技術・システム開発項目の一つ、「エンジン燃焼器・システム技術開発」として行われました。現在運航している航空機のエンジン機構を大きく変更せず、CO2を排出しない新燃料「液化水素」での飛行を目指すものです。CO2削減効果が大きいと考えられる160人乗りサイズの航空機がメインターゲットです。
2.開発した熱交換器の特徴
■日本初の技術達成
水素燃焼式の民間航空機エンジン向けの液化水素熱交換器を開発し、実環境レベルの実証実験を完了しました。
現在主流の航空機のエンジンとは、空気を吸入して圧縮し、その一部を燃料と混合して高温ガスを生成するとともに、これらを後方へ噴射することで推力を発生させる動力装置です。エンジン向け熱交換器とは、燃料の温度を適切な温度に安定して昇温し、エンジンの正常運転を補助する装置です。
本製品は、燃料となる液化水素が細い管の中を移動する間に、エンジンの排気ガス熱を利用して、安定した燃料制御やエンジン燃焼器への供給に適した温度まで昇温させる役割を担います。その役割を果たしつつ、推力に影響する排気ガスの噴射を妨げる構造は最小限に、かつ軽量な熱交換器を実現しました。
■開発における技術的挑戦
液化水素は、従来燃料と比べて燃焼速度が速く、かつ高温で燃焼するため、燃焼制御の難易度が極めて高い性質を持ちます。安定した水素燃焼を実現するには、液化水素を適切な温度に安定して昇温する機能が不可欠であり、熱交換器が重要な役割を果たします。
・金属材料の劣化リスク:金属材料と水素の接触による強度・延性低下に対する対策が必須
これらの課題を克服し、航空機という高い安全性が求められる環境で使用可能な製品を実現しました。
3.実証試験の成果
本熱交換器は、以下の厳しい試験をクリアし、実環境レベルの実証実験を完了しました。
■実施した試験内容(2025年3月~2026年1月)
強度成立性を確認する各種環境試験:
・破壊圧試験:設計圧力を超える圧力での耐久性確認
・熱衝撃試験:急激な温度変化への耐性検証
・圧力サイクル試験:繰り返し圧力変動への耐久性評価
・自励振動試験:エンジン運転時の振動環境再現
・加振・衝撃試験:飛行環境の振動・衝撃への耐性確認
加振試験の様子
熱交換器の基本性能を確認する評価試験:
JAXAの協力も得て、秋田県の能代ロケット実験場で液化水素を使用して熱交換器の性能確認試験を実施し、設計通りの性能を実証、かつ安定して昇温できることを実証しました。
4.今後の展開
開発を完了した熱交換器は2026年よりKHIで実施するエンジン試験に使用される予定です。
2030年度までに予定されている地上での実証試験の結果を踏まえ、実際の航空機エンジンへの搭載を進め、事業化を目指します。
本技術が実用化されることで、航空業界全体のCO2排出削減に大きく貢献し、2050年までのカーボンニュートラル社会実現に寄与することが期待されます。
住友精密工業は、今回の開発成果を礎に、水素航空機をはじめとする次世代機の実用化に向けた技術開発をさらに加速してまいります。環境に優しい次世代の航空機の実現を通じて、カーボンニュートラルな持続可能な社会の構築に貢献してまいります。
■住友精密工業株式会社について
1961年、航空機器の製造で培った高強度金属材料の精密加工技術を礎に、事業をスタート。航空機の脚システムや、航空機のエンジン用熱交換器をはじめとする熱制御システムの開発・製造を行っています。宇宙機器分野では、JAXA H2Aロケット用および国際宇宙ステーション用の熱交換器を開発するなど、新エネルギーである水素用熱交換器にも技術を応用しています。
【関連リンク】
住友精密工業ウェブサイト:https://www.spp.co.jp/
【お問い合わせ先】
〒660-0891 尼崎市扶桑町1番10号 住友精密工業株式会社
電話:06-6482-8811
広報担当:お問い合わせフォーム
